フリーランスが憂鬱になる毎年2月~3月の”確定申告”
正しく申告をすれば”年に一度のボーナスチャンス”になります。
・払いすぎた税金を取り戻すチャンス!
・稼ぎが少なければ色々な減免制度をうけられるようになる
・自分の稼ぐ力の証明になる
なぜ確定申告しなければならないのか
まず、仕事をしている人は「確定申告するのは義務である」ということ。
外注で請ける仕事は”源泉徴収”と言って、先に国に10.21%の所得税を持っていかれています。
1年間の収支をまとめて「私の稼ぎは〇〇円でした!」と算出して、先に持ってかれてた源泉徴収と相殺、払いすぎていればお金が戻ってきます。
(稼いでる人は逆に税金を納めることになりますが、その納めるべき税金が相殺されて安くなります)
あまり稼いでいない人にとって10.21%の税金は納めすぎです。
確定申告は先人たちが勝ち取ってきた権利
昔は賦課課税制度といい、国から勝手に計算されて「あなたの商売は〇〇円の税金ですので払ってください」とお達しが来ていました。
所得税が最高85%まで達するなど悲惨な状況のなか、過去の先人たちが勝ち取ったのが”申告納税制度”になります。
申告制ですと個々人で商売の仕方や経費率が違うものをそれぞれに計算して税金を納めますので、自分の経済状況がきちんと税金に反映されます。
つまり
確定申告とは、個人事業主に許された権利、活用しないと勿体ない!
・この権利がなければみなし経費とかを勝手に決められて強制的に納税させられている。
・節税の手法を知ってるかどうかで各個人でものすごく利益率が変わってくる。
・対処してない人はノーガードで本来払わなくていい税金を取られ放題になっている。
サラリーマンは年収がわかれば大体の手取りは把握できます。
個人事業主は経費率や節税によりめちゃくちゃ差が出るので、年収から実際の利益を判断するのは非常に困難です。
自分しか把握出来てないので、自分自身できちんと申告しましょうね。ということです。
サラリーマンの場合
給与所得者(サラリーマン、アルバイト、パート等)は税金を引かれてから手元にお金が入ります。
自動的に天引きされてるので納税の痛みというものがあまりありません。
また、給与収入に対して一律の金額を引かれているので、稼いでなくても所得税と住民税を問答無用に持っていかれます。
ちなみに、会社が天引きした税金を持っていってるわけではなく、国に命令されて会社側が経理を雇って徴税システムの代理をやらされています。
個人事業主の場合
一方、個人事業主はまず必要なことに使って、残ったお金から税金を支払います。
納付書を使って自分自身の手で納税していくので
お金を払う痛みをダイレクトに味わいます。
なので個人事業主は節税に敏感になります。
「国にいっぱい納税できて幸せ(*´ω`*)」なんて人は私は見たことがありません(笑)
会社員で年収1千万なのに手取り100万とかは見ないと思いますが、個人事業主ならわりとありえます。
確定申告をすることでわかるもの
・1/1~12/31までの総収入
・収入から経費を引いた所得を出すことが出来る
・所得を元に
→国民健康保険の金額が決まる
・所得がわかれば課税所得がわかる
→そこから所得税が決まる
→所得税がわかると住民税がわかる
→消費税、事業税もわかる
こんな感じで把握することが出来ます。
所得があると?
「私はこれだけの稼ぎがあります!」という証明になります。
確定申告をしてない場合は無職扱いになりますし、所得が無いと一切稼ぐ能力が無いと判断され、ローンやクレカの申請などの”信用情報”が弱くなります。
住宅ローンなど金額の大きいものはある程度の所得がないと通りません。
確定申告をしないとどうなるのか
・源泉徴収が奪われたまま取り戻せない
・「非課税証明書」が取得できない
・本来なら減免されるはずの国保、年金、住民税などの出費が増えている場合がある
・公営住宅、保育料の補助、乳幼児医療費助成、奨学金、不動産の賃貸契約が不利に
・貴方の「稼ぐ力」の証明が出来ないので、事故に遭って保障や賠償などが必要なときに無職と同等とされる(「休業損害」や「逸失利益」)
・企業と仕事をした場合には支払調書が国に提出されているので、あなたが申告をしていなくても国には収入が把握されています
日本は所得が少ない人にはさまざまな補助や支援をしてくれますが、確定申告をしないとあなたの稼ぎが正しく判断出来ないため、そういったセーフティーネットの網の目から漏れてしまいます。
確定申告に必要なもの
・確定申告書B
・収支内訳書(損益計算書)※1/1~12/31までの間の帳簿です
・貸借対照表 ※青色申告のみ
・各種控除の証明書類
・支払い調書、源泉徴収票
★確定申告については是非こちらの記事もご覧ください
日頃から準備しておくもの
・レシート、領収書は毎回貰う癖をつけましょう
・記録に残らない現金でのやり取りや交通費などは「出金伝票」に記載しておく
・帳簿は確定申告時期に近くなってからまとめてやろうとすると物量がすさまじいですし、当時の記憶が薄れてなんのお金かわからなくなるので、日頃からコツコツつけておきましょう
・確定申告時期が近付くと送られてくる控除の証明書などは絶対に捨てないように
家計簿アプリ、確定申告ソフトを使うのが絶対におすすめ
マネーフォワードがオススメです。
無料版でも最低限は使えますが、連携数、仕訳数に制限がありますので有料版にした方が無難です。
手書きでの記帳の手間を考えると有料分の金額は余裕でペイ出来ます。
支払調書は絶対に必要なものではない
支払調書は企業が国に申請するための書類です。
仕事をした私たちまで送付する義務はありませんので会社側が親切で送ってくれてるだけです。
……ですので、支払調書がなくても自分で収支を把握し帳簿を管理するひつようがあります。
確定申告の大まかな流れ、支払う税金
「私は1年間にこれだけ稼いで、そこからこれだけ経費を使って、利益はこのぐらいになりました!」
「なので税金を〇〇円支払います!」
ということを書類でまとめていくのが確定申告になります。
例:売上500万のフリーランス
「私は1年間に500万稼いで、そこから経費を200万使って、利益(所得)は300万、課税される額は160万になりました!」ということがわかります。
この場合、【国保29万円】【所得税8万円】【住民税16万円】ということが確定申告で計算できました。
そして、総売上に対してすでに天引きされてた源泉徴収が【約50万円】だと仮定すると所得税を払いすぎですね?
相殺して【42万】還付されることになります。
後に住民税を払ったとしても手元にお金が残ります!
※分かりやすくするため、かなり大雑把な計算をしております
節税意識が高いとこんなにお得です
”所得”と”課税所得”の違いを覚えよう
①総売上:1年間で仕事で得た収入の合計
②所得:収入から経費をすべて引いたもの
→国保はここの所得を元に計算されます
→あなた自身の稼ぐ能力はこの金額になります
③課税所得:所得から各種控除を全て引いたもの
→この課税所得から所得税、住民税が計算されます
④税金:課税所得に税率をかけて算出されます
所得税
”課税所得”にこの税率をかけて、控除額を引きます。
課税所得 | 税率 | 控除される金額 |
1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
この表のとおり、所得税は”累進課税”となり、稼げば稼ぐほど税負担が大きくなり、
住民税と合わせると最高税率は55%になります。
住民税
国保と同じく各市町村で細かく違うところなのでシミュレーションサイトを活用した方がいいのですが、概ね”課税所得”の【10%】になります。
個人事業税
非常にややこしいところなのですが、個人事業税は他の税金と計算方法が異なります。
所得金額+青色申告特別控除-事業主控除=個人事業税の課税所得金額
・青色申告特別控除が適用されない
・なので所得金額に一度青色申告の控除額を足す(10万~65万)
・そこから事業主控除290万を引く
個人事業税は”事業主控除290万”がありますので
所得290万以下の場合にはかかりません。
”イラストレーター”は第3種事業の”デザイン業”に分類されるため、個人事業税5%かかります。
ここ大事なところですが、住民税と所得税は払ってもなにもなりませんが、個人事業税は経費にできます。
消費税
売上1000万未満は免税事業者になるので、仕事でもらった消費税はそのままもらうことが出来ちゃいます。
・消費税の処理をしなくていいので帳簿が楽
・開業より2年間は誰でも免税事業者
※それらを対応すべく、「インボイス制度」というものが今後出来ます。
(当ブログでも記事にする予定です)
控除の一覧
フリーランスに関係ありそうなものだけ抜粋
・基礎控除
・青色申告特別控除
・医療費控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・生命保険料控除
・寄付金控除
・配偶者控除
・扶養控除
・事業主控除
・基礎控除
基礎控除は48万円
誰でも控除されます。
所得2400万円を超えると控除額が減っていきますが、ほぼ当てはまらないと思いますので48万で覚えましょう。
・青色申告特別控除
記帳方法によって額が変わりますが10万~65万控除されます。
控除という名前ですが、実際には「経費」として引けるものです。
とにかくお得なことが多いのでフリーランスなら使わない手はないです。
・医療費控除
世帯で合計した金額。
家族で1年間に使った医療費、薬代、病院までの交通費などになります。
世帯の誰かに合算して控除できるので、一番所得が多い人に適用させるとお得です。
合計医療費10万円以上を超えた分が控除される場合と、所得が少ない人は10万以下でも控除される場合があります。
・社会保険料控除
国民年金、国民健康保険に支払ったお金。
全額控除になります。
例えば会社員の夫が妻の分の保険料を払っている場合には夫の控除にすることが出来ます。
・小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済、iDeCoの一年間の掛け金
掛けた金額がすべて控除されます。
・生命保険料控除
民間の保険に支払った場合も控除が使えます。
非常に計算が複雑なため詳細は省きますが、大体5~12万ぐらいが上限です。
※国の保険制度と違って全額控除にはなりません。
・寄付金控除
・ふるさと納税
・クラファンなどへの寄付(寄付金控除証明書が付くものだけ)
・配偶者控除
生計を共にしている配偶者の所得が【48万以下~133万】であれば【38万~3万円】の控除を引くことが出来ます。
※ただし、身内を事業専従者にして給料を払っている場合にはNGです。
・扶養控除
16歳以上の配偶者以外の親族で、生計を共にしている場合に適用されます。
所得【48万以下】で適用。
控除額は【38万~63万】まで
※ただし、身内を事業専従者にして給料を払っている場合にはNGです。
・事業主控除
個人事業税を計算する際に所得から【290万】引くことができます。
経費になるものとは
”仕事に使ったと自分できちんと説明できるもの” が経費になります。
イラストレーターの場合は
・パソコンやiPadなどの機材
・イラスト制作ソフト
・有料素材
・デッサン人形や本などの資料代
・仕事場の家賃、光熱費、通信費
・打ち合わせをしたときの交通費、飲食費
・出先で仕事した際のカフェ代(基本的に飲み物しか認められない)
など
経費にならないもの
支払った住民税、所得税など
仕事と関係ない費用(食費、日用品、服飾費、化粧品代など)
納税スケジュール
確定申告が終わると、諸々の納付書が手元に届きます。
それに従い1年間をかけて納税していきます。
1月 | 国民年金、国保、住民税 |
---|---|
2月 | 国民年金、国保 |
3月 | 国民年金、国保、3/15確定申告期限、所得税、消費税※1 |
4月 | 国民年金 |
5月 | 国民年金 |
6月 | 国民年金、国保、住民税 |
7月 | 国民年金、国保、予定納税※2 |
8月 | 国民年金、国保、住民税、個人事業税※3 |
9月 | 国民年金、国保 |
10月 | 国民年金、国保、住民税 |
11月 | 国民年金、国保、予定納税、個人事業税 |
12月 | 国民年金、国保 |
※1:消費税 →売上1千万未満の免税事業者は無し
※2:予定納税 →前年度の納税が15万未満の場合は無し
※3:個人事業税 →所得290万以下や事業の種類によっては無し
このように、個人事業主は一年中何かしらの税金を支払ってます。
税務署ってなにをしてるの?
税務署は、”必要書類がそろっているか””必要箇所に印鑑があるか”ぐらいのチェックしかしません。
内容まではその場で見てないのです。
後々チェックされて、税金が足りないなどの”国側への損失”の不備があれば税務調査の連絡が来ますが、国民側が損してる分には何一つ言ってきません。
(あえて所得を増やしているのか等の事情もあるかもしれませんし、そこまで口出してきません)
オススメの確定申告の本3選
ネットで情報収集をしても確定申告できるとは思いますが、書籍で一通り学ぶことをオススメします。
①お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!
2020年現在、日本一売れてる税金の本です。
とりあえずこれ一冊あれば確定申告のことは解決すると思います(このブログの存在意義は)
ほぼ全編漫画形式で非常に読みやすいです。
②令和改訂版 フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。
こちらもロングセラーの税金関連の本です。
著者と税理士さんの会話形式で進行するので読みやすく、4コマや補足の図など大変わかりやすいです。
ぶっちゃけた節税トークなんかも聞けます。
※令和改訂版では”インボイス制度”の追記があります。
③漫画家と税金~確定申告やってみた~基本編
全編漫画形式で進行。
めちゃくちゃ読みやすいです。
漫画家さんの確定申告の本なので、アシスタントさんへのお給料やごはん代など、かゆいところまで手が届く内容になっております。
番外編:完全版 無税入門
これはちょっと毛色が違うのですが、”確定申告の知識を正しく極めるとここまで出来るのか”という見本になります。
筆者は会社員+副業イラストレーターで、イラスト仕事の経費で赤字を出しサラリーマンとしての税金をすべて相殺、完全な無税を達成しております。
違法はことは一切してません。
まとめ
・確定申告はわからないと怖いものだけど、理解できるとボーナスチャンス
・無対策だと税金はとても高い
・経費として自分に必要なことに使える個人事業主はつよい
・税務のルールは毎年変わっていくので常にアンテナを張るべし
・節税バトルと考えるとわりと楽しい
・コツコツと帳簿をつけてればそれほど手間ではない
それではまた、ゆるく長くいきましょう💪